パンくず
慢性蕁⿇疹の治療ゴールとは?
監修:⽇本医科⼤学 ⼤学院医学研究科 ⽪膚粘膜病態学分野 ⼤学院教授 佐伯 秀久 先⽣
慢性蕁⿇疹患者はその症状によって⽇常⽣活に悩みを抱えています。患者の治療満⾜度を上げ、QOL向上を⽬指すには、どのようなゴールを設定し、治療を進めることが必要なのでしょうか?
今回は患者の残存症状と治療ゴールについてご紹介いたします。
目次
1.コントロール状況別にみたQOLへの影響(海外データ)
慢性特発性蕁麻疹のコントロール状況別にみたDLQIスコアと睡眠の障害の度合いはそれぞれ完全奏効で0.29と0.00、コントロール良好で2.50と1.19であり、コントロール状況とQOLの指標のひとつであるDLQIスコアや睡眠の障害の度合いに関連性があることが示唆されました。
DLQIスコア:⽪膚疾患に特異的なQOL評価指標で、最近1週間の⽪膚症状がQOLに及ぼす影響を点数化する。スコアが⾼いほどQOLが低いことを⽰す。
睡眠の障害:睡眠への障害の度合いは、Urticaria Patient Daily Diary(UPDD)において患者が0〜3の4段階で⾃⼰評価した。各患者の7⽇間のスコアを合計した。スコアが⾼いほど障害の度合いが⼤きいことを⽰す。
対象・⽅法:慢性特発性蕁⿇疹に対するオマリズマブの海外第Ⅲ相試験データ975例(ASTERIA Ⅰ試験318例・ASTERIA Ⅱ試験322例・GLACIAL試験335例)の併合解析。対象試験の全ての投与群と評価ポイントのデータを併合し、試験と投与群を固定効果とし、性別、年齢、罹病期間を共変量とした混合効果回帰モデルを⽤いて、慢性特発性蕁⿇疹のコントロール状況別に、DLQIスコア、CU-Q2oLスコア、⽇常活動の障害、睡眠の障害の調整済み平均スコアと標準誤差を推定した。⽋測値は多重代⼊法により補完した。
調査の限界:本研究の主な限界として、サンプルサイズが⼩さいことにより、特定の時点での結果が統計学的に有意でなかったことがあげられる。
注)オマリズマブの承認外の用法及び用量の投与群のある試験が含まれている。また、蕁麻疹に対する効能又は効果が承認外の併用薬が含まれている。
Stull D, et al. Br J Dermatol. 2017;177(4):1093-1101.
本研究にノバルティスは資⾦提供を⾏いました。著者にノバルティスの社員が含まれます。
著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料/研究助成⾦/旅費を受領している者が含まれます。
2.蕁⿇疹の治療⽬標
「蕁麻疹診療ガイドライン2018」における最初の治療目標は「治療により症状が現れない状態」、最終目標は「無治療で症状が現れない状態」であり、症状が無い状態を目指すことが重要とされています。
蕁⿇疹診療ガイドライン2018. ⽇⽪会誌. 2018;128(12):2503-2624. p.2510. Ⓒ⽇本⽪膚科学会 2018
3.抗ヒスタミン薬に抵抗する蕁⿇疹の重症度と治療薬追加のめやす
薬物療法の第1選択薬としては⾮鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬が推奨され1)、効果不⼗分の場合は変更や増量、併⽤を考慮してもよいとされています2)。
増量については、保険診療上概ね2倍量までが許容されます*1。それでも効果不⼗分な場合には、補助的治療薬としてヒスタミンH2受容体拮抗薬や抗ロイコトリエン薬*2などの併⽤を検討することも可能です1)。
抗ヒスタミン薬に抵抗する蕁⿇疹の重症度と治療薬追加のめやす1)
*1:抗ヒスタミン薬の効能⼜は効果、⽤法及び⽤量については各製品の電⼦添⽂等をご確認ください。
*2:ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗ロイコトリエン薬の蕁⿇疹に対する効能⼜は効果は承認外
1)蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 2018;128(12):2503-2624. p.2511. p.2513. ⓒ日本皮膚科学会 2018
2)千貫祐子. Mebio. 2017;34(10):28-35.
4.慢性特発性蕁⿇疹に対する治療(AWARE試験)(海外データ)
慢性特発性蕁⿇疹患者を対象とした報告において、コントロール不良(UCT<12)患者のうち観察期間中(来院時)に抗ヒスタミン薬の承認⽤量から増量にステップアップした患者は0〜6.7%でした。
また、抗ヒスタミン薬の増量からオマリズマブ併⽤治療にステップアップした患者は0〜1.9%でした。
コントロール不良(UCT<12)患者における治療法の変遷
⽬的:ドイツの抗ヒスタミン薬抵抗性慢性特発性蕁⿇疹患者における疾患負担、QOLおよび治療実態を記述する。
対象:2ヵ⽉以上抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)抵抗性の18〜75歳の慢性特発性蕁⿇疹患者1,550例
⽅法:実臨床下における国際共同前向き観察試験。ドイツにおいて登録された患者の疾患特性、薬物治療、QOL(DLQI、CU-QoL、AE-QoL)について報告した。
解析計画:結果は記述法により報告した。
研究の限界:AWAREレジストリの性質上、各パラメータにおけるデータ数にばらつきがある。また、観察期間中(来院時)に抗ヒスタミン薬の承認⽤量から増量にステップアップした患者数および抗ヒスタミン薬の増量からオマリズマブ併⽤治療にステップアップした患者数が全来院時を通じて少ない。
Maurer M, et al. Clin Exp Allergy. 2019;49(5):655-662.
本研究にノバルティスは資⾦提供を⾏いました。著者にノバルティスの社員が含まれます。
著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料/研究助成⾦の受領およびアドバイザリー契約をしている者が含まれます。
5.慢性蕁⿇疹の残存症状と治療ゴール
⽇本医科⼤学 ⼤学院医学研究科 ⽪膚粘膜病態学分野 ⼤学院教授 佐伯 秀久 先⽣
| 慢性蕁⿇疹はQOLを障害する疾患であり、患者は⽇常⽣活に困難を抱えています。今回お⽰ししたデータでも、⽇常⽣活への影響はコントロール状況が悪化するほど⼤きくなり、QOL改善においても完全奏効が必要であると⽰唆されました。 「蕁⿇疹診療ガイドライン2018」では、治療により、あるいは無治療で症状が現れない状態が治療⽬標として設定されており、残存症状を無くすことを念頭においた診療が重要となっています。 薬物治療においては、抗ヒスタミン薬で効果不⼗分な場合は治療強化を検討しますが、ご紹介したAWARE試験のデータにおいても充分な治療強化が⾏えていない可能性が⽰唆されました。その原因として、患者⾃⾝もある程度症状が改善するため、既存の治療に満⾜しているケースがみられます。 しかしながら、実際には痒みや膨疹といった症状が残存しており、患者のQOLを障害している場合があります。慢性蕁⿇疹診療においては、こういった患者⼀⼈⼀⼈の状況を踏まえ、残存症状ゼロを⽬指した治療介⼊が今後はより⼤切になってくると考えます。 |
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