ご存じですか?慢性蕁⿇疹患者の悩み

監修:あたご⽪フ科 副院⻑ 江藤 隆史 先⽣

慢性蕁⿇疹患者は、症状に対する悩みや⽇常⽣活における困りごとをどの程度抱えているのでしょうか? 今回は、慢性蕁⿇疹患者のQOL障害の程度や治療満⾜度についてご紹介します。

1.⽇常⽣活への⽀障と治療満⾜度

慢性特発性蕁⿇疹患者を対象としたアンケート調査

慢性特発性蕁⿇疹患者の痒みの程度は、⽇中では重症の痒みが開業⽪膚科受診患者で7割、病院⽪膚科で6割、開業内科で約7割と過半数を占めました。また、夜間では、重症の痒みが受診した医療機関を問わず約5割を占めました。

※重症の痒み:⽇中「かなり痒く、⼈前でも掻く痒み」と「いてもたってもいられない痒み」の合計、夜間「痒くて⽬がさめる」と「痒くてほとんど眠れない」の合計

初診時の痒みの重症度
 

Image
初診時の痒みの重症度 日中のかゆみ 棒グラフ
Image
初診時の痒みの重症度 夜間のかゆみ 棒グラフ

対象・⽅法:ヤフーバリューインサイト(株)[現・(株)マクロミル]が、1,736,481名の登録パネルを⽤いて、2009年10〜11⽉に蕁⿇疹治療のために医療機関を受診(受診前1週間は処⽅薬を内服せず)した16歳以上の患者560,027例を対象にアンケート調査を実施した。初回受診時に慢性特発性蕁⿇疹で内服薬を処⽅された594例に対し、「症状に対するつらさ」や、「薬物治療の満⾜度」および「医療機関への受療意識」などの調査を⾏った。

古川福実. 新薬と臨牀. 2011;60(7):1402-1410.

Image
RELEASE調査概要
Image
RELEASE調査

慢性蕁⿇疹患者を対象にしたインターネットによる「RELEASE調査」

対象・⽅法:2017年4〜5⽉に⽇本で実施した、Webによる横断的⾮介⼊観察研究。蕁⿇疹、乾癬、および/またはアトピー性⽪膚炎と診断されており、過去1年以内に医療機関への受診歴がある患者を対象に、アンケートによるオンライン調査を⾏った。調査項⽬には⼈⼝統計学的特性、受療状況、蕁⿇疹の疾患コントロール度などが含まれた。さらに、現在および過去12ヵ⽉間で最も症状が重かった4週間のDLQI、WPAI-GH、UCTについても回答を求めた。
調査の限界:医師による診断が各調査参加者による報告に依存していたこと、過去の最も症状が重かった状態について患者が思い出して回答している情報を含んでいること、軽度〜重度のさまざまな状態の患者を募集したことがあげられる。

Itakura A, et al. J Dermatol. 2018;45(8):963-970.
本研究にノバルティスは資⾦提供を⾏いました。著者にノバルティスの社員が含まれます。著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料を受領している者が含まれます。


Image
RELEASE調査概要
Image
RELEASE調査

2.慢性蕁⿇疹患者の疾病負荷

疾患別にみたDLQIスコアは、アトピー性⽪膚炎6.1、乾癬4.8に対し、慢性蕁⿇疹は4.8でした。慢性蕁⿇疹の症状は患者の⽇常⽣活に影響を与えていることが⽰唆されました。

疾患別DLQI

Image
慢性蕁麻疹患者の疾病負荷 疾患別DLQI 慢性蕁麻疹:DLQIスコア4.8、アトピー性皮膚炎:DLQIスコア6.1、乾癬:DLQIスコア4.8
Image
慢性蕁麻疹患者の疾病負荷

DLQI:Dermatology Life Quality Index。過去1週間の症状が患者のQOLに与える影響について評価する⽪膚疾患に特異的な指標。10項⽬の質問からなり「症状・感情」「⽇常⽣活」「レジャー」「仕事・学校」「⼈間関係」「治療」に分類される。30点満点で評価し、点数が⾼いほどQOLが低いことを表す。


Image
RELEASE調査概要
Image
RELEASE調査

3.労働⽣産性に対する影響

慢性蕁⿇疹のコントロール状況別にみたabsenteeism(⽋勤)はUCT≧12(コントロール良好)で2.8、UCT<8(コントロール不良)で2.9であったのに対し、presenteeism(出勤している労働者の⽣産性低下)はUCT≧12で12.4、UCT<8で34.5でした(⾚枠)。このように慢性蕁⿇疹のコントロール状況が悪化すると患者の労働⽣産性が低下する可能性があります。

コントロール状況別 WPAI-GHスコア

Image
慢性蕁麻疹の労働生産性に対する影響 コントロール状況別 WPAI-GHスコアの表
Image
慢性蕁麻疹の労働生産性に対する影響 コントロール状況別 WPAI-GHスコアの表

WPAI-GH:過去7⽇間の仕事への影響を評価する指標。absenteeism(⽋勤)、presenteeism(出勤している労働者の⽣産性低下)、労働⽣産性損失、⽇常活動能⼒損失の4つの下位尺度により構成されている。障害度および⽣産性低下の割合を%で表し、スコアが⾼いほど仕事や⽇常活動に⼤きな障害が⽣じていることを⽰す。

UCTについては、こちらでご紹介しています。


4.慢性蕁⿇疹患者の疾病負荷と治療満⾜度

あたご⽪フ科 副院⻑ 江藤 隆史 先⽣

2023年の厚⽣労働省患者調査1)によると約50万⼈が蕁⿇疹に罹患しているとされ、その半数以上が慢性蕁⿇疹であったとの報告もあります2)。また、慢性蕁⿇疹患者のQOLはアトピー性⽪膚炎や乾癬などの他の⽪膚疾患と同様に障害されていることが⽰唆されているにもかかわらず、我が国では慢性蕁⿇疹患者の疾病負荷についてはあまり注⽬されていませんでした3)。加えて、蕁⿇疹は⼀般的な疾患のため、患者⾃⾝も「たかが蕁⿇疹」と考えてしまい、疾患理解が不⼗分な場合もあります。
しかし、今回データでお⽰しした通り、慢性蕁⿇疹患者は痒みや膨疹などの症状によってQOLの障害や労働⽣産性の低下といった影響を受けており、その疾病負荷は患者にとって我々の想像以上に⼤きなものとなっている可能性があるため、適切な治療が必要です。
先⽣⽅が⽇頃診療されている患者のなかにも、⽇常⽣活において困難を抱えている⽅がいらっしゃるかと思います。
今後は、このような患者のQOL改善を念頭においた、慢性蕁⿇疹診療が重要になると私は考えます。

 

1)厚⽣労働省:令和5年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表),2023(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html、2025年11⽉6⽇閲覧)
2)⽥中稔彦 ほか. アレルギー. 2006;55(2):134-139.
3)Itakura A, et al. J Dermatol. 2018;45(8):963-970.


5.Urticaria Control Test(UCT)

Urticaria Control Test(蕁⿇疹コントロールテスト)。過去4週間の蕁⿇疹のコントロール状態について、患者⾃⾝が評価する指標。4つの質問を0〜4点、計16点満点で評価し、点数が低いほど状態が悪いことを表す。

じんましん症状チェックシート

じんましんと診断された患者向けのUCTチェックシートです。ぜひ⽇々の診療にご活⽤ください。

Image
じんましん症状チェックシート 表裏のイメージ図

次の記事を読む

蕁⿇疹の他の話題を知る

ゾレア製品について

Web講演会のご案内

Web講演会⼀覧をご案内します。

Web面談予約

デジタルコミュニケーターとの⾯談予約はこちらから