患者向け疾患解説ツール

「おしえて!慢性じんましん」のご紹介

慢性蕁⿇疹の診療において、先⽣⽅にお役⽴ていただける疾患解説ツールを作成いたしました。本ツールの使い⽅や各パートのポイントをご紹介いたします。

「おしえて!慢性じんましん」

患者からよく受ける質問や、治療を進めるにあたって重要となるポイントをQ&A形式で解説しています。

主な内容

・じんましんには原因があるの?
・じんましんの治療を続けるポイントは?
・じんましんはどうやって治療するの?
・じんましんのしくみとお薬について

印刷したツールをご⼊⽤の場合は⽪膚免疫領域におけるデジタルコミュニケーターとのオンライン⾯談でお申し付けください。

目次

1.「おしえて!慢性じんましん」のポイント

島根⼤学医学部 ⽪膚科学講座 准教授 千貫 祐⼦ 先⽣

慢性蕁⿇疹はCommon Diseaseであり、また患者にとっても馴染みのある疾患であるため、すぐに治ると捉えられているケースがあります。
しかし、慢性蕁⿇疹は、アトピー性⽪膚炎や乾癬と同様に患者のQOLを障害し1)、その症状が数年続く場合もあります。
また、特発性の蕁⿇疹は⼣⽅〜夜にかけて悪化しやすいとされており2)、⽇中の診療では患者の症状を把握することが難しく、さらに⾎液検査などで明確に重症度を評価することもできないため、症状把握や治療効果判定がしづらい疾患です。


本ツールは、そのような慢性蕁⿇疹患者とのコミュニケーションをサポートし、診療を効率的に進めていただくことを⽬的に作成いたしました。
これより、それぞれのパートごとに内容とポイントをご紹介いたします。先⽣⽅の診療にお役⽴ていただけますと幸いです。

1)Itakura A, et al. J Dermatol. 2018;45(8):963-970.
2)蕁⿇疹診療ガイドライン2018. ⽇⽪会誌. 2018;128(12):2503-2624. p.2523.

2.Q:じんましんには原因があるの?

蕁⿇疹患者の多くは⾃⾝の症状を引き起こす原因を知りたがっています。そのため、検査をしてほしいということもよくあります。
しかし、原因が特定されない特発性蕁⿇疹は全体の約80%を占め、アレルギー性蕁⿇疹は0.5%程度という報告もあり1)、ガイドラインでも、「蕁⿇疹というだけで、安易にスクリーニング的な検査を⾏うことは慎まねばならない」とされています2)
本パートは、明らかに検査が必要でないと思われる患者に対し、検査が必ずしも推奨されていないことを説明していただくために作成しました。

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じんましんのタイプ別の割合の円グラフ 原因がわからないじんましん:79.9%、原因が明らかなじんましん:17.7%、その他(血管性浮腫・じんましん関連疾患:2.4%) じんましんの多くは検査をしても原因がわからないため、むやみに検査を受けることはおすすめしません。
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じんましんのタイプ別の割合の円グラフ 原因がわからないじんましん:79.9%、原因が明らかなじんましん:17.7%、その他(血管性浮腫・じんましん関連疾患:2.4%) じんましんの多くは検査をしても原因がわからないため、むやみに検査を受けることはおすすめしません。

調査概要:2020年10⽉1⽇〜11⽉11⽇に⽇本の⽪膚科及びアレルギー科の9つのクリニックを受診したじんましん患者1061例を対象に、医師が記⼊した症例報告書を収集し、調査を実施した。じんましんのサブタイプは、2018年に⽇本⽪膚科学会が提唱した定義を使⽤して分類した。

Saito R,et al. J Dermatol. 2022;49(12):1255-1262.より作図
1)Saito R,et al. J Dermatol. 2022;49(12):1255-1262.
2)蕁⿇疹診療ガイドライン2018. ⽇⽪会誌. 2018;128(12):2503-2624. p.2510.

3.Q:じんましんの治療を続けるポイントは?

ガイドラインでは、抗ヒスタミン薬を1〜2週間服⽤しても症状が消失、軽減しない場合は治療変更を検討することが必要とされています。しかし、患者は残存症状を積極的に訴えない場合も多く、症状が残っていたり、⽇常⽣活の困りごとによってQOLが障害されている場合はしっかりと医師に伝えることが⼤切である点を理解いただくことが重要と考えます。
蕁⿇疹はすぐ治ると考えている患者もいますが、実際には罹病期間が⻑期にわたる場合もあります。しかし、適切な治療を⾏うことで残存症状をなくすことが⽬指せますので、じっくりと治療に取り組んでもらう必要があります。
本パートでは、治療検討のために残存症状を伝えることや罹病期間が⻑くなる場合でも治療継続することの重要性をお伝えしています。

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ポイント1 抗ヒスタミン薬の治療を1〜2週間続けても症状が消えない、よくならない場合は、治療を考え直す必要があるかもしれません。 このようなおお困りごとがあれば、遠慮せず医師にお伝えください。 かゆみがあってつらい、夜ぐっすり眠れない、仕事や学業に集中できない、趣味を楽しめない、人目が気になる ポイント2 症状がなくなるまで時間がかかる場合もあります。あせらず治療を続けましょう。

※慢性じんましんであった期間は平均14.2週、症状がでる頻度が⾼い⽅では、平均6年という報告があります(海外データ)1)

1)Jiamton S, et al. J Med Assoc Thai. 2003;86(1):74-81.

4.Q:じんましんはどうやって治療するの?

慢性蕁⿇疹においては、どのような治療選択肢があるのか知らない状態で治療を⾏っている患者も多くいます。
慢性蕁⿇疹治療にはさまざまな治療選択肢があり、状況や希望に応じて治療強化や減量・減薬ができることを治療早期のタイミングで伝えることが、患者の治療モチベーションの向上につながります。また、治療の⾒通しやゴールを理解したうえで、患者が求める、「治療をしなくても症状があらわれない状態」を⽬指すことが重要です。
本パートでは、患者が⾃⾝の症状を積極的に伝えられるように後押しし、治療継続におけるコミュニケーションがよりスムーズになることを⽬指します。こちらでは、ガイドラインに沿った、診断から最終⽬標までの治療の流れを、ポイントとともにご紹介しています。

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じんましん治療と目標の図 普段から症状を記録して診察時に医師に伝えてみましょう。医師はそれをもとに薬を減らしたり、なくしたり、さまざまな治療選択肢を考えることができます。

*1 じんましんには保険適⽤なし *2 慢性じんましんには保険適⽤なし

蕁⿇疹診療ガイドライン2018. ⽇⽪会誌. 2018;128(12):2503-2624. をもとに作成

5.じんましんのしくみとお薬について

疾患と各薬剤の機序を説明するための薬物治療の解説パートとなります。
蕁⿇疹がどのような機序で発症しているか、また各薬剤がどのように症状の改善に役⽴っているかを、視覚的にわかりやすいようイラスト化しました。
治療開始時や治療変更のタイミングで、患者に各薬剤の役割を短い時間でスムーズに理解してもらうことを⽬的としています。

じんましんはなぜ起きるの?
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じんましんはなぜ起こるの?発症のイメージ図

じんましんは、⽪膚にあるマスト細胞が何らかの理由で刺激され、なかに抱えているヒスタミンなどの物質を放出することで起こります。
ヒスタミンは、⽪膚の⾎管を広げ、成分を⾎管の外に漏れ出やすくするため⽪膚の⾚み(紅斑)や腫れ(膨疹)などの炎症反応を引き起こし、また、かゆみの神経を刺激することから、じんましんではかゆみがでます。

じんましんのお薬とは?
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じんましんのお薬とは?イメージ図
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お薬の種類 マスト細胞への刺激を防ぐお薬、免疫反応の動きを抑えるお薬、ヒスタミンをブロックするお薬、血管や原因物質に働く補助的なお薬、炎症を抑えるお薬
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お薬の種類 マスト細胞への刺激を防ぐお薬、免疫反応の動きを抑えるお薬、ヒスタミンをブロックするお薬、血管や原因物質に働く補助的なお薬、炎症を抑えるお薬

6.「おしえて!慢性じんましん」をご活⽤いただくにあたって

島根⼤学医学部 ⽪膚科学講座 准教授 千貫 祐⼦ 先⽣

慢性蕁⿇疹診療では、患者からのさまざまな質問や要望に対して、限られた診療時間のなかで対応することに苦慮される場合も多いかと存じます。また、実際に薬物治療を受けている患者のなかには症状コントロールができていない⽅が多く存在し1)、患者の困りごとや症状を正確に把握する必要があり、より効果的かつ効率的なコミュニケーションが求められています。
本疾患解説ツールは患者が不安に感じていることを解消し、疾患や治療に対する理解を深めることを⽬的に作成いたしました。
患者の治療満⾜度の向上のためにも、慢性蕁⿇疹治療の⽬標である、「治療により、あるいは無治療で症状があらわれない状態」を⽬指し、残存症状を無くすことが重要であると私は考えます。
本ツールが先⽣⽅の慢性蕁⿇疹診療をサポートできるものとなるよう願っております。ぜひご活⽤ください。

1)Itakura A, et al. J Dermatol. 2018;45(8):963-970.
本研究にノバルティスは資⾦提供を⾏いました。著者にノバルティスの社員が含まれます。著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料を受領している者が含まれます。

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