B12301試験

2)未治療の2~18歳未満のSMA患者を対象とした海外第Ⅲ相試験〔B12301試験:STEER〕(海外データ)1,2)

 

1)社内資料:海外第Ⅲ相試験(B12301試験)(承認時評価資料)

2)Proud CM. et al.: Nat Med. 2026; 32(2): 481-487
COI:本試験はNovartis Pharmaの資金により行われた。著者にNovartis Pharma/Novartis Gene Therapies/Novartis Healthcareの社員及びNovartis Pharma/Novartis Gene Therapiesより謝礼/コンサルタント料/助成金を受領している者が含まれる。

1.試験概要

目的

2~18歳未満の未治療のSMA患者に、ゾルゲンスマ髄注を単回投与したときの有効性、安全性及び忍容性をシャム処置との比較により評価する。

 

対象

5qSMAと診断され、SMN2遺伝子のコピー数は問わず、支えなしで座位(10秒以上)は可能だが、補助なしで歩行は不可能な患者126例

―主な選択基準―

  • スクリーニング開始時に2歳以上18歳未満
  • 5qSMAの診断がスクリーニング期に確認された患者
  • SMNを標的とした治療(例:ヌシネルセン、リスジプラム)を受けたことがない患者
  • 支えなしで座位(10秒以上)は可能だが、補助なしで歩行は不可能な患者
  • 6ヵ月齢以降にSMAの臨床症状を認めた患者

試験方法

ゾルゲンスマ髄注は1.2×1014vgを髄腔内に単回投与した。アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)カプシドに対する免疫反応を抑制するために、ゾルゲンスマ髄注を投与する約24時間前から投与後30日間以上、プレドニゾロン1mg/kg/日(1日最大投与量60mg)の予防投与を行った。
本試験は、スクリーニング期、ベースライン期、評価期1(主要評価期、52週間)、評価期2(12週間)で構成される。スクリーニング期にすべての適格性が確認された患者を、投与予定日の約2週間前にゾルゲンスマ群又はシャム群に3:2の比でランダム化※1した。評価期1の1日目に、ゾルゲンスマ群の患者にはゾルゲンスマ髄注を投与、シャム群の患者にはシャム処置を行った。評価期1が終了した後、評価期2の適格性が確認された患者は盲検性を維持したまま評価期2に移行した。366日目に、ゾルゲンスマ群の患者にシャム処置、シャム群の患者にゾルゲンスマ髄注を投与した。

※1:割付因子は、スクリーニング期の年齢、及び投与前(スクリーニング期の2回)のHFMSEスコアの最高値(2~5歳未満:15点以下、15点超。5~13歳未満:10点以下、10点超。13~18歳未満:HFMSEスコアによる層別化なし)とした。

 

試験デザイン

第Ⅲ相、ランダム化、シャム対照、二重盲検試験

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試験デザイン

評価項目

主要評価項目

評価期1の終了時(52週)のHFMSEスコアのベースライン※2からの変化量(2~18歳未満)[検証的解析項目]

 

副次評価項目

評価期1の終了時(52週)における以下の運動機能評価

  • HFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満)
  • HFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加(2~18歳未満、2~5歳未満)
  • RULMスコアのベースライン※3からの変化量(2~18歳未満、2~5歳未満)

安全性(有害事象)

 

探索的評価項目

  • HFMSEスコアのベースラインからの変化量(5~18歳未満)
  • RULMスコアのベースラインからの変化量(5~18歳未満)

※2:ベースライン値は、層別化に使用したスクリーニング時の最高値及びベースライン時の値の平均値を用いた。なお、いずれかの値が得られなかった場合には、得られた値を採用した。
※3:ベースライン値は、評価期1での治験製品投与前(スクリーニング及びベースライン)の状況に応じて以下のとおりとした。

  • 3回ともスコアが得られた場合:得られたすべてのスコアの平均値

  • 3回のうち2回でスコアが得られた場合:2回のスコアの平均値

  • 3回のうち1回のみスコアが得られた場合:1回のスコアを採用

 

●評価項目の解説

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評価項目の解説

解析計画

有効性の主要評価項目は、FAS(full analysis set)の全体集団(2~18歳未満)を対象に解析した。評価期1の終了時のスコアは48週と52週のスコアの平均値と定義し、いずれかの評価時点のスコアが得られなかった場合にはスコアが得られた評価時点のスコアを採用した(データカットオフ日:2024年11月12日)。
主要解析には、ベースライン後から評価期1の終了時までのすべての来院時のHFMSEスコアを含めた。評価項目は反復測定混合モデル(MMRM)を用いて解析した。モデルには、HFMSEスコアのベースラインからの変化量を従属変数とし、治療、時点を固定効果、治療と時点の交互作用、層別因子及び投与前のHFMSEスコアを共変量として含めた。患者内の時点間の相関は、無構造共分散行列を用いた。各群の最小二乗平均、標準誤差及びその95%信頼区間(CI)、最小二乗平均の群間差、その95%CI及び両側p値を時点別に算出した。評価期1の終了時に、最小二乗平均の群間差の両側p値が逐次検定法により定められた有意水準よりも小さい場合には、帰無仮説が棄却されることとした。なお、収束しない場合には、分散共分散構造に対し、無構造共分散行列ではなく複合対称行列を使用することとした。
副次評価項目のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満)及びRULMスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、2~5歳未満)については、主要評価項目と同様の方法を用いて解析した。
副次評価項目のHFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加については、全体集団では、治療、層別因子、及び投与前のHFMSEスコアを共変量としたロジスティック回帰モデル(firthの方法)を用いて解析、2~5歳未満の部分集団では、治療、時点、治療と時点の交互作用、層別因子、及び投与前のHFMSEスコアを共変量とし、“logistic”をリンク関数とした一般化線形混合効果モデルを用いて解析した。
主要評価項目及び副次評価項目について、多重性を調整した。事前に規定した階層的ゲートキーピング法及びHochberg法に従い、試験全体の第1種の過誤率を両側0.05に制御した。詳細は下図に示す。
安全性の評価項目は、評価期1はSAF、評価期2まではOAS(OAV101 treated analysis set)を対象に解析した。安全性の要約には治験製品の投与以降(1日目~52週来院日まで)に得られたデータを含めた(試験完了日:2025年4月29日)。

 

●多重性の調整

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多重性の調整

●解析対象集団

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解析対象集団

2.患者背景(FAS)

ゾルゲンスマ群(n=75)において、SMA発症年齢の中央値(範囲)は11.0(6-31)ヵ月齢、投与時年齢の中央値(範囲)は4.67(2.1-16.6)歳で、男女はほぼ同数であった。最高到達運動機能は、支えなしで座るが54.7%、補助ありで立つが22.7%、補助ありで歩くが20.0%、補助なしで立つが2.7%であった。スクリーニング時のSMN2遺伝子のコピー数は3が97.3%を占めた。

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患者背景(FAS)

スクリーニング来院時の年齢(歳):(記録された年齢×12+記録された月齢)∕12で算出
投与時(Day1)の年齢(歳):[スクリーニング来院時(Visit1)の日齢+(Day1の日付−Visit1の日付)]∕365.25で算出

3.有効性

(1)HFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満)[FAS][主要評価項目][検証的解析結果]

評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ゾルゲンスマ群で2.39点、シャム群で0.51点、群間差は1.88(95%CI:0.51,3.25)点であり注)、ゾルゲンスマ群のシャム群に対する優越性が検証された(両側p値=0.0074、MMRM、両側有意水準0.01)。

注)Ⅱ型SMA患者におけるHFMSEのMCID(minimal/minimum clinically important difference:臨床的に重要な最小の差)は、改善が1.46点以上、悪化は-3.21点以下とされている3)
*共変量:治療と時点の交互作用、層別因子、投与前のHFMSEスコア

 

評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、FAS)

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評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、FAS)

HFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

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HFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

Waterfall plot:HFMSEスコアのベースラインからの変化量(FAS)

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Waterfall plot:HFMSEスコアのベースラインからの変化量(FAS)

(2)HFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満)[FAS][副次評価項目]
HFMSEスコアのベースラインからの変化量(5~18歳未満)[FAS][探索的評価項目]

評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、2~5歳未満の部分集団ではゾルゲンスマ群で3.00点、シャム群で1.56点、群間差は1.44(95%CI:-0.33,3.22)点であり、統計学的有意ではなかったため、検定の手順を終了した(両側p値=0.1097、両側有意水準 0.0045、多重性調整あり、MMRM)。
また、5~18歳未満の部分集団ではゾルゲンスマ群で1.60点、シャム群で-0.86点、群間差は2.45(95%CI:0.42,4.49)点であった。

*共変量:治療と時点の交互作用、層別因子、投与前のHFMSEスコア

 

評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満、FAS)

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評価期1の終了時のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、FAS)

年齢別のHFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

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年齢別のHFMSEスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

Waterfall plot:年齢別のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(FAS)

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Waterfall plot:年齢別のHFMSEスコアのベースラインからの変化量(FAS)

(3)HFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加(2~18歳未満、2~5歳未満)[FAS][副次評価項目]

評価期1の終了時にHFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加が認められた患者の割合は、2~18歳未満ではゾルゲンスマ群で39.2%、シャム群で26.0%であり、ゾルゲンスマ群のシャム群に対するオッズ比は2.03(95%CI:0.90,4.57)であり、統計学的有意ではなかったため、検定の手順を終了した(両側有意水準 0.005、ロジスティック回帰モデル)。
2~5歳未満の部分集団ではゾルゲンスマ群で48.8%、シャム群で37.9%であり、ゾルゲンスマ群のシャム群に対するオッズ比は1.27(95%CI:0.46,3.56)であった。

*共変量:治療、層別因子、投与前のHFMSEスコア

 

評価期1の終了時にHFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加が認められた患者の割合(FAS)

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評価期1の終了時にHFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加が認められた患者の割合(FAS)

n:HFMSEスコアのベースラインから3点以上の増加が認められた例数、m:評価期1の終了時の例数、両側p値は多重性調整あり

(4)RULMスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満)[FAS][副次評価項目]

全体集団(2~18歳未満)で、評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、ゾルゲンスマ群で2.44点、シャム群で0.92点、群間差は1.52(95%CI:0.34,2.71)点であり、統計学的有意ではなかった(両側有意水準 0.0025、多重性調整あり、MMRM)。

*共変量:治療と時点の交互作用、層別因子、投与前のHFMSEスコア

 

評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、FAS)

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評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量(2~18歳未満、FAS)

RULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

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RULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

(5)RULMスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満)[FAS][副次評価項目]
RULMスコアのベースラインからの変化量(5~18歳未満)[FAS][探索的評価項目]

評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均は、2~5歳未満の部分集団では、ゾルゲンスマ群で3.27点、シャム群で1.82点、群間差は1.45(95%CI:-0.22,3.12)点であった。5~18歳未満の部分集団では、ゾルゲンスマ群で1.42点、シャム群で-0.31点、群間差は1.72(95%CI:0.14,3.30)点であった。

 

評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満、FAS)

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評価期1の終了時のRULMスコアのベースラインからの変化量(2~5歳未満、FAS)

年齢別のRULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS)

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年齢別のRULMスコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均の推移(FAS) 

4.安全性

評価期1の安全性の概要[SAF][副次評価項目]

有害事象は、ゾルゲンスマ群で75例中74例(98.7%)、シャム群で51例中46例(90.2%)に発現し、このうち治験製品との関連ありと判断された有害事象はゾルゲンスマ群で27例(36.0%)、シャム群で5例(9.8%)であった。
重篤な有害事象は、ゾルゲンスマ群で21例(28.0%)、シャム群で17例(33.3%)に発現し、このうち治験製品との関連ありと判断された重篤な有害事象はゾルゲンスマ群で8例(10.7%)、シャム群で1例(2.0%)であった。
本試験の評価期1において死亡に至った有害事象は認められなかった。

 

安全性の概要(評価期1)

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安全性の概要(評価期1)

主な有害事象(いずれかの群で5%以上、評価期1)

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主な有害事象(いずれかの群で5%以上、評価期1)

MedDRA version.28.0

 

重篤な有害事象(いずれかの群で2例以上、評価期1)

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重篤な有害事象(いずれかの群で2例以上、評価期1)

MedDRA version.28.0

 

評価期2までの安全性の概要[OAS]

評価期2までの治験治療を受けた解析集団121例(評価期1のゾルゲンスマ群75例、評価期2に移行したシャム群46例)のうち、有害事象は104例(86.0%)に発現し、このうち治験製品との関連ありと判断された有害事象は36例(29.8%)であった。
重篤な有害事象は34例(28.1%)に発現し、このうち治験製品との関連ありと判断された重篤な有害事象は12例(9.9%)であった。本試験の評価期2までにおいて死亡に至った有害事象は認められなかった。

 

安全性の概要(評価期2まで)

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安全性の概要(評価期2まで)

主な有害事象(5%以上、評価期2まで)

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主な有害事象(5%以上、評価期2まで)

MedDRA version.28.0

 

重篤な有害事象(2例以上、評価期2まで)

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重篤な有害事象(2例以上、評価期2まで)

MedDRA version.28.0

文献

1)社内資料:海外第Ⅲ相試験(B12301試験)(承認時評価資料)
2)Proud CM. et al.: Nat Med. 2026; 32(2): 481-487
3)Coratti G. et al.: Eur J Neurol. 2024;31(8):e16309.