ファビハルタ FAQ(2025年4月作成)
以下は、Web掲載FAQ共通の記載内容です。ページの冒頭に記載します。
製品FAQは医療に従事する先生方からよくご質問いただく内容をまとめたものです。記載している情報はあくまで参考情報としてお取り扱いいただき、医療上のご判断は医療従事者の裁量と責任のもとに行っていただきますようお願い致します。
製品のご使用にあたっては、最新の電子化された添付文書(電子添文)をご確認ください。製品に関してご不明な点がございましたら、弊社お問い合わせ窓口にお問い合わせください。
1.特定の背景を有する患者
妊婦へ投与してもいいですか?
電子添文では、妊婦又は妊娠している可能性のある女性への投与に関して禁忌の規定はございません。
ただし、ファビハルタ投与の妊婦への影響を適切に評価できる臨床試験はないことから、妊婦又は妊娠している可能性のある女性へ投与する場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与してください。雌ラットを用いた受胎能及び着床までの初期胚発生試験に おいて、臨床用量の5.4倍の曝露(AUC)で、着床前及び着床後胚死亡率の高値、並びに 生存胎児数の低値が認められています。
ファビハルタの投与経験はわずかであり、重大な先天異常、流産、母体又は胎児の有害な転帰の薬剤関連リスクについての情報は得られていません。
APPLY-PNH試験で妊娠が2例報告されています。
1例はファビハルタを約4ヵ月間服用した後、妊娠が判明し, ファビハルタを漸減投与後に中止しました(最終投与日:Day 141)。患者は正常児を満期出産しました。
1例はファビハルタの投与開始約6ヵ月後以降に2回妊娠し、いずれも人工妊娠中絶を受けました2)。
(参考)
1) ファビハルタ電子添文
2) 申請資料概要2.7.4-2.1.5.2.1
授乳婦へ投与してもいいですか?
電子添文では、授乳婦への投与に関して禁忌の規定はございません。
ただし、ファビハルタのヒト乳汁中への移行は不明であり、哺乳中の児又は乳汁産生に対する影響に関するデータはないことから、授乳婦に投与する場合は、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討してください。
(参考)
ファビハルタ電子添文
腎機能障害患者に投与する場合に注意することはありますか?
重度(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)腎機能障害患者への投与は、本剤の血中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがあるため患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意してください1)。
軽度及び中等度の腎機能障害患者では、母集団薬物動態解析※の結果より、腎機能が正常な患者と比較して、血中イプタコパン濃度が増加する傾向が認められたものの、臨床試験における有害事象の発現状況に安全性上問題となる傾向は認められませんでした。重度の腎機能障害患者では、母集団薬物動態解析の結果より、腎機能が正常な患者と比較して、血中イプタコパン濃度が増加する傾向が認められたこと、臨床試験に組み入れられた重度の腎機能障害を有する患者は1例のみであり、薬物動態及び安全性の評価には限界があることから、重度の腎機能障害を有する患者に本剤を投与する場合は、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意してください2)。
<マスバランス試験(A2101試験)>
健康成人に14C標識した本剤100mg注1)を単回経口投与したときの、総放射能(イプタコパン及び代謝物)の平均総排泄率は、投与量のそれぞれ便中71.5%及び尿中24.8%であり、投与量の96%以上が排泄されました。未変化体として投与量の17.9%が尿中に、16.8%が便中に排泄されました(外国人データ)。
注1) 本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する」である。
<母集団薬物動態解析>
母集団薬物動態解析を用いて、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者における腎機能障害がイプタコパンの曝露量に及ぼす影響を評価した結果、腎機能が正常な患者(98例)、軽度(eGFR60以上、90mL/min/1.73m2未満)(45例)、中等度(eGFR30以上、60mL/min/1.73m2未満)(17例)及び重度(eGFR30mL/min/1.73m2未満)(1例)の腎機能障害患者におけるイプタコパンのAUCtauの平均値は、それぞれ32100、37500、43800及び47000ng・h/mL、Cmaxの平均値はそれぞれ3940、4480、5170及び5610ng/mLと推定されました。なお、透析患者については評価を行っていません。
(参考)
1) ファビハルタ電子添文
2) ファビハルタ適正使用ガイド 3.Q&A
肝機能障害患者に投与する場合に注意することはありますか?
肝機能障害患者への投与は、非結合型の血中イプタコパン濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがあるため患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意してください1)。
<肝機能障害患者を対象とした薬物動態試験(A2105試験)>
軽度(Child-Pugh分類A)、中等度(Child-Pugh分類B)又は重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害患者に 本剤200mgを単回経口投与し、肝機能障害がイプタコパンの曝露量に及ぼす影響を評価しました。血漿 中のイプタコパンについて、軽度の肝機能障害患者(8例)ではイプタコパンのCmaxが約1.04倍に増加しま したが、中等度(8例)又は重度(6例)の肝機能障害患者では変化は認められませんでした。軽度及び重度 の肝機能障害患者ではいずれもAUCinfが1.03倍に増加しましたが、中等度の肝機能障害患者では変化 は認められませんでした。その一方、血漿中の非結合型のイプタコパンについて、軽度、中等度及び重度の 肝機能障害患者でCmaxはそれぞれ1.38倍、1.67倍及び2.11倍に増加しました。また、AUCinfはそれ ぞれ1.48倍、1.58倍及び3.71倍に増加しました(外国人データ)2)。
(参考)
1) ファビハルタ電子添文
2) ファビハルタ適正使用ガイド 3.Q&A
2.用法及び用量
飲み忘れた場合の対応について教えてください。
ファビハルタの服用を忘れた場合、PNH型赤血球は補体介在性溶血から保護されなくなり、溶血が認められるおそれがあるため、決して2回分を一度に服用せず、気がついた時に、1回分を服用し、次の服用時間が近い場合は1回とばして、次の時間に1回分服用し、投与スケジュールを遵守してください1)。
※「次の服用時間が近い場合」に具体的な時間の設定はありません。ファビハルタの血中濃度の低下による溶血のリスクを考慮し、記載の通り2回分を同時に服用する時間帯でなければ、気づいた時点で服用してください。
以下の情報は海外の添付文書情報であり、国内の電子添文に記載のない内容を含む可能性がありますので、ご注意ください。
アメリカの添付文書及びEUの添付文書における記載は以下のとおりです。
米国の添付文書(2025年3月作成)
できるだけ早く(次の予定量の直前であっても)1 回分を服用し、次の通常の服用時間に再開するよう指導すること。
EUの添付文書(2025年2月作成)
飲み忘れた場合は、できるだけ早く(次の投与予定日の直前であっても)1 回分を服用し、その後、通常の投与スケジュールを再開するよう患者に指導すること。数回連続して投与できなかった患者には、溶血の潜在的な徴候や症状がないか観察する必要がある。
(参考)
1) ファビハルタ適正使用ガイド 3. Q&A
ファビハルタインタビュフォーム
補体(C5)阻害剤(エクリズマブ、ラブリズマブ)以外の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療薬から変更する場合に注意することはありますか?
補体(C5)阻害剤(エクリズマブ、ラブリズマブ)以外のPNH治療薬からファビハルタに切り替える際は、投与の中止に伴う溶血のリスクを低減するため、エクリズマブ、ラブリズマブから切り替える時と同様に前治療薬の投与間隔を考慮してください1)。
(参考)
1) ファビハルタ適正使用ガイド 1.3.2
3.安全性(過量投与、相互作用、RMP対応等)
ファビハルタを使用する際、処方要件(医師要件/施設要件)および流通制限はありますか?
ファビハルタは承認条件による全例調査や電子添文およびRMPに基づく適正使用/安全性管理のため、処方要件の設定や、納入管理を実施中です。詳しくは、弊社営業部門にお尋ねください。
<電子添文抜粋>
1.警告
1.1.3 髄膜炎菌感染症は致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで、あるいは髄膜炎菌感染症の診断及び治療が可能な 医療施設との連携下で本剤を投与すること。
21. 承認条件
21.2 日本人での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例 を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデ ータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
21.3 本剤の投与が、発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断、治療に精通し、本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機 関のもとで、髄膜炎菌感染症の診断、治療に精通した医師との連携を取った上でのみ行われるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。
(参考)
ファビハルタ電子添文
投与中に手術をする際、休薬は必要ですか?
ファビハルタを投与中に外科的手術等の治療を行う場合、手術に伴い補体が活性化するリスク1)があることから休薬の必要はないと考えられます。手術の影響等によりブレイクスルー溶血が発現した際には、必要に応じてガイドライン等を参考にレスキュー治療を検討してください。
また、ファビハルタの休薬および中止の必要があると判断した場合は、ファビハルタの投与中止後に溶血が起こる可能性を鑑みて、代替治療を検討してください2)。
そのほか、専門家によるコンセンサス3)で、経口補体阻害薬服用中の患者は、24時間を超えて薬剤を消化管から吸収できない場合、経口投与できるまではC5阻害薬に切り替えるとあります。
(参考)
1) 発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和 4 年度改訂版
2) ファビハルタ適正使用ガイド 1.3.3
3) Dingli, D. et al.: Hematology. 2024; 29(1) :2329030.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39665683/
投与中止後に生じる溶血の機序・対処法は?
ファビハルタの投与を中止すると、PNH型赤血球は補体介在性溶血から保護されなくなるため、溶血が起こると考えられます。
対処法として、ファビハルタを中止する場合は他の抗補体薬などの代替療法への切り替えを考慮し、投与中止後に溶血が発現した場合は、ファビハルタの投与再開を検討してください1)。
(参考)
1) ファビハルタ適正使用ガイド 1.3.3
重大な副作用である髄膜炎菌感染症/重篤な感染症の発現機序・対処法は?
ファビハルタは補体第二経路の上流を阻害し、MAC形成及びC3を介したオプソニン化の両方を抑制するため、これらの感染防御プロセスを用いる莢膜形成細菌に対する感染リスクがあります1)。
対処法として髄膜炎菌等の重篤な感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意して観察を十分に行い、髄膜炎菌等の重篤な感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行ってください2)。
(参考)
1) Schubart A, et al.: PNAS. 2019;116(16):7926-7931
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30926668/
2) ファビハルタ適正使用ガイド 2.1
4.製剤(貯法、安定性、懸濁等調剤関連)
ファビハルタは脱カプセル、簡易懸濁法による投与、一包化してもいいですか?
ファビハルタを脱カプセルして投与すること、懸濁して投与することは、承認外の用法となります。脱カプセルして投与した際、懸濁して投与した際の有効性、安全性、薬物動態は確立していませんので、弊社からは推奨していません。
また、ファビハルタを一包化して安定性を検討したデータはありません。
参考までに、ファビハルタの無包装における安定性は、25℃/60%RHおよび30℃/75%RH、無包装条件下で3カ月間、含量などの試験の結果はすべて適合でした1)。
(参考)
1) ノバルティスファーマ社内資料 無包装における安定性