C3腎症患者さん体験談インタビュー

プロフィール

Aさん(C3腎症発症後10年程度)
高校2年の健康診断で異常が見つかり、高校3年の夏に腎生検を経てC3腎症と診断される。大学受験を控えた時期に入院治療を受けることになり、受験勉強に大きな不安があったが、学校や塾の協力を得て乗り越えた。大学進学を経て、現在は職場の理解も得ながら治療を続けている。

「運動のせいかも」と思っていた異常が徐々に大ごとに

C3腎症が見つかったきっかけは、高校2年の秋に、学校の健康診断で尿タンパクが陽性になったことでした。自覚症状はまったくありませんでした。激しい運動で尿タンパクが出ることがあると聞いたことがあったので、このときは「運動部で毎日運動をしているせいかも」ぐらいにしか思っていませんでした。

近所の一般内科を受診した後、市立病院で再検査を受けました。すると、「おそらく腎臓の病気で、専門的な治療が必要になりそうなので、設備が整った病院を受診したほうがいい」と言われ、大学病院の腎臓内科を紹介されたのです。大学病院と聞いて、「これはさすがに大ごとかもしれない」と思い始めました。

大学病院での腎生検で、C3腎症が確定

大学病院でいろいろな項目を検査したところ、免疫関係の腎臓の病気だということが分かりました。医師からは、病気について大まかな説明を受けた後、食事制限や運動制限、安静にする必要があることなど、生活上の注意点をいろいろ言われたことを覚えています。「病気なら仕方ないかな」と思いました。まだ高校生だったので、食事の管理は母親がしてくれましたし、この時点ではそこまで大変だとは思っていませんでした。振り返ってみると、家族のほうが不安になっていたかもしれません。

医師から腎生検が必要だと説明を受け、入院して腎生検を受けることになりました。事前に検査の流れや痛みなどについて説明を受けていたので、そこまで心配はしませんでした。実際、あまり怖くもなく、痛みも特にない、というのが私の実感でした。この頃でも自覚症状はなかったので、放っておいたらどんどん悪化していたかもしれません。

腎生検の結果、C3腎症であることが確定しました。C3腎症はまだ分かっていないことが多い病気で、同じ病気の人はかなり少ないと説明を受け、この先どうなるのだろうかと心配でした。

高3の夏、学校や塾の協力で入院中も受験勉強を継続

C3腎症の診断がつくと、そのまま入院を続けて、約2ヵ月にわたって治療を受けました。私はこのとき17歳。高校3年の夏で、何よりも不安だったのは大学受験のことでした。勉強はどうすればいいのか。そもそも翌年に受験ができるのだろうか。長く付き合っていく病気にもかかわらず目先の受験のことで頭がいっぱいで、それ以上先のことは一切考えられず、この頃は精神的にかなりつらい状態でした。通っていた高校や塾に事情を話したところ、友人や講師の協力が得られ、入院中も勉強を続けることができました。

担当の医師も、とても親身になってくださいました。たびたび病室まで来て話をしてくださいましたし、問題集を見てアドバイスを下さることもありました。すぐに私はこの医師をとても信頼するようになりました。

日常生活や医療機関の受診には制約や不便も

退院後は、日常生活を送る上でいろいろな制約がありました。具体的には、塩分やタンパク質の摂取制限、運動制限、重いものを持たないようにすること、感染症対策として人混みを避けることなどです。高校ではこうした制約を考慮してもらい、満員電車を避けるために登校時間を30分遅らせてもらったほか、階段の上り下りをしなくて済むように、校内のエレベーターを特別に使わせてもらっていました。

一番きつかったのは食事制限です。母親は塩分とタンパク質が少なく、量の多い料理を作ってくれましたが、10代の食べ盛りの時期に食事制限がかかってしまうのはつらいことでした。食事制限は大学2、3年の頃まで続きました。お酒を飲めないので、周りが飲んでいるのがうらやましかったです。一人暮らしもしてみたかったのですが、当時はかなり厳格な食事制限が必要だという治療方針だったので、一人では難しいとの判断で諦めざるをえませんでした。

貧血など、外出に支障をきたす不調が生じることもありました。いつ起こるか分からないので常に不安はありましたが、あまり他人には言いたくなかったので、友人など家族以外の人には伝えずに自分で対処していました。不調が生じて担当医に連絡すると、いつもすぐに対応してくださったのはありがたいことでした。こうしたことで担当医への信頼は高まっていきました。

担当の医師は、これまで何度か替わりましたが、担当が替わっても、信頼関係はきちんと築けてきました。最近は同じ医師に診てもらっています。

他の医療機関を受診する際には少し手間がかかることがあります。一度、担当医に連絡した上で、一般のクリニックや病院に行き、お薬手帳を見せて事情を説明するようにしています。C3腎症の診断を受けてからは感染予防に気をつけているので、風邪を引いて受診が必要になったことはほぼありませんが、歯科治療で困ったことが何度かあります。服用している薬の関係で、通常の虫歯治療や抜歯ができないのです。近隣のクリニックでは対応できないこともあり、親知らずの治療のときは、結局、担当医が所属している病院の歯科で治療を受けました。事前に1ヵ月ほど薬の調整と体調の観察が必要になるのも、通常より大変な点だと思います。

職場でも理解を得て、働きながら治療を継続中

大学卒業後は治療を続けながら働いています。通院頻度は、数ヵ月に1回ぐらいです。診察では、まず担当医の説明を聞いてから、私から確認したいことを質問するようにしています。例えば、「何か体調の変化があったとき、どういうものだったら連絡したらよいでしょうか?」と質問して、こちらから連絡すべきタイミングを把握しておくようにしています。そのほか、担当医に伝えておいた方がいいかなと自分が思うことがあれば、伝えるようにしています。

食事制限や運動制限は、現在は特に行っていません。今の病状に基づいた判断になりますが、担当医とも相談しながら、現在は以前より食事・運動制限が緩和されています。食べすぎや飲酒はしないように気をつけていますが、普通の食生活や人並みの運動は問題ないとのことで、日常生活に大きな制約はなくなってきています。

そして、幸いにも職場での理解が得られたため、治療を続けながら働くことにも特に問題はありません。職場では、必要に応じて事情を説明するようにしてきました。病気のことを日常生活の中で説明するときは、「C3腎症」ではなく「腎炎」と伝えています。「腎炎」という言い方だと、比較的理解されやすいようです。一緒に働いている人たちには、私の状況を理解してもらえている状態だと思います。