セムブリックスの副作用マネジメント(骨髄抑制編Q&A)
● Q1 セムブリックスの臨床試験における骨髄抑制の発現について、どのような点に着目すべきでしょうか?
● Q2 セムブリックスの骨髄抑制に対する副作用マネジメントのポイントについて、どのように考えますか?
● Q3 骨髄抑制について、患者さんとのコミュニケーションはどのように実施されていますでしょうか?
INTRO
慢性骨髄性白血病(CML)の治療において、副作用としてまず想起されるのは骨髄抑制ではないでしょうか。好中球減少や血小板減少は、用量調整や休薬の判断など、日常診療の意思決定に関わる重要な要素です。一方で、治療継続の許容範囲や介入のタイミングに悩むケースも少なくありません。
本コンテンツでは小野孝明先生に、骨髄抑制を中心としたセムブリックスの副作用マネジメントに関する3つの質問にご回答いただきました。
先生ご自身のご経験と照らし合わせながらご覧ください。
Q1 セムブリックスの臨床試験における骨髄抑制の発現について、どのような点に着目すべきでしょうか?
Expert’s Answer
私は、初発CMLを対象としたセムブリックスのASC4FIRST試験(国際共同第Ⅲ相検証試験)における骨髄抑制にあたる各事象を詳細に確認する必要があると思います。
ASC4FIRST試験の96週データでは、セムブリックス群で血小板減少症が28.0%(56/200例)、好中球減少症が25.5%(51/200例)、白血球減少症が19.0%(38/200例)、貧血が12.5%(25/200例)だったと報告されています(図1)1)。Grade 3以上の骨髄抑制にあたる有害事象の発現率は、セムブリックス群で血小板減少症が13.0%(26/200例)、好中球減少症が10.5%(21/200例)、白血球減少症が2.0%(4/200例)、貧血が2.0%(4/200例)でした。
このように、ASC4FIRST試験では、Grade 3以上の骨髄抑制も報告されており、特に注意を要すると考えられます。
日本人集団を対象とした部分集団解析の48週データにおいても、セムブリックス群で骨髄抑制にあたる有害事象が報告されています(図3)2,3)。Grade3以上でも、好中球数減少が19.0%(4/21例)、血小板数減少が14.3%(3/21例)などであり、日本人集団においては特に注意が必要になると考えます。
一方で、各事象の発現率に加えて、骨髄抑制が発現した際に投与継続が可能であったかという観点も重要なポイントです。同試験における投与中止に至った有害事象の発現率は、セムブリックス群で5.0%(10/200例)であり、そのうち骨髄抑制としては、血小板減少症が全Gradeで1.0%(2/200例)、Grade 3以上で0.5%(1/200例)でした(図4)1,4)。
骨髄抑制は一定頻度で認められるものの、骨髄抑制を理由に投与中止に至った症例は限られていました。そのため、適切なモニタリングおよびマネジメントのもと、投与継続の可能性について検討することが重要と考えます。
Q2 セムブリックスの骨髄抑制に対する副作用マネジメントのポイントについて、どのように考えますか?
Expert’s Answer
ASC4FIRST試験の発現時期別の有害事象発現率から、セムブリックスの血液関連の事象の多くは、投与開始後早期、特に3ヵ月以内の発現が多いと考えます(図5)1)。
また、リアルワールドの報告として、特定使用成績調査の最終集計結果が示されております。副作用は骨髄抑制が8.6%(45/523例)に認められ、主な事象は血小板数減少が5.2%(27/523 例)、好中球減少症が2.7%(14/523 例)などでした(図6)。さらに、骨髄抑制の初回発現までの日数(中央値)は36.0日でした5)。
これらの結果から、セムブリックスの投与に伴う骨髄抑制は、投与開始後3ヵ月以内、特に1ヵ月前後に発現する可能性があるため、この時期はより一層注意が必要と考えます。
特に長期の治療を行う上では適切なモニタリングも重要です。
私は投与開始後1週目および2週目に血球数算定を含む血液検査を実施しています。2週目に骨髄抑制が認められた場合は翌週にも再評価を行いますが、問題がなければ4週目に再診いただきます。その後も検査結果を踏まえながら、徐々に受診間隔を延長しています。
また、骨髄抑制が認められた際には、図7を参考に休薬や減量などの適切な処置を行う必要があります。また、必要に応じてG-CSF製剤の投与や赤血球輸血、血小板輸血などを考慮します6)。
Q3 骨髄抑制について、患者さんとのコミュニケーションはどのように実施されていますでしょうか?
Expert’s Answer
骨髄抑制を適切にマネジメントするうえで、私は「早期発見」と「適切な対応」、そして「患者さんとの継続的なコミュニケーション」が重要であると考えています。
具体的なコミュニケーションについて、自験例を用いてご説明します。
図8の症例は、慢性期CMLの27歳男性で、ELTSスコアは低リスクに該当しており、セムブリックス投与開始後3週時点で血小板数が30,000/mm3、白血球数が2,880/mm3となったため、セムブリックスを休薬しました。
3週間の休薬を経て、血小板数が213,000/mm3まで回復したため、適正使用ガイドのアルゴリズムに則り、1回40mgを1日1回に減量して投与を再開しました。その後は投与量調節の基準となる値を下回っていません。
こうした対応をスムーズに行えるように、私は治療初期から骨髄抑制が出現する可能性に加え、早めの対処が重要であることを患者さんにしっかりと伝えています。
しかし、骨髄抑制は自覚症状が乏しく、血液検査で初めて発覚することも多いと考えます。そこで、私は各血球の検査値にGrade 1以上の減少が見られる場合は、翌週にも血液検査を実施するようにしています。セムブリックス投与開始後3ヵ月以内、特に1ヵ月前後は注意が必要と考えており、前述の対応をしています。
さらに、以下のような自覚症状があった際には、病院に速やかに連絡するように患者さんに説明しています。
〇発熱(特に38℃以上)
〇感染を疑う症状(喉の痛み、咳など)
〇出血傾向(歯ぐきからの出血、あざができやすいなど)
〇強い倦怠感や息切れ
これらの症状は、骨髄抑制に関連する可能性があるため、自己判断せずに連絡いただくことが重要です。また、こうした副作用に対しては、まず適切な対応でコントロールを試みること、必要に応じて休薬、投薬量を調整しながら治療継続を考えていくことも併せて説明しています。 これにより、患者さんが安心して治療に臨めるよう心がけています。
今回は小野先生に、骨髄抑制を中心としたセムブリックスの副作用マネジメントに関する3つの質問についてお答えいただきました。
いかがだったでしょうか。
本内容が先生方のCML診療における副作用マネジメントの一助になれば幸いです。
ASC4FIRST試験(国際共同第Ⅲ相試験)の概要
安全性の概要
1) Cortes JE et al.: Blood. 2026; 147(13): 1433-1446.(利益相反:本試験はノバルティスの資金により行われた。本論文の著者にノバルティスの社員、ノバルティスより研究助成金などを受領した者が含まれる)
2) 社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(J12301/ASC4FIRST試験)(承認時評価資料)
3) Takahashi N et al.:Int J Hematol 2025 ; 122(5):647-659(利益相反:本試験はノバルティスの資金により行われた。本論文の著者にノバルティスの社員、ノバルティスより助成金又は謝礼金などを受領した者が含まれる)
4) 社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(J12301試験/ASC4FIRST)(96週時点CSR)
5) Yamaguchi K, et al.: Int J Hematol. 2026;124(2):177–191(利益相反:本論文の著者らはノバルティスの社員である)
6) セムブリックス 適正使用ガイド(2025年5月改訂版)