

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は製品基本情報をご参照ください。 |
日本人MS患者510例に対するオファツムマブのリアルワールドデータ
関西多発性硬化症センターを受診した多発性硬化症(MS)患者に、実臨床でオファツムマブを投与したときの有効性および安全性を検討した。対象は活動性が平均的/平均以上のMS患者510例で、実臨床であるため再発が誘導されないよう、臨床試験では設けていた前治療薬のwash-out期間を設けずにオファツムマブの投与を開始した。3ヵ月毎に神経学的検査、再発に関連しない障害進行(progression independent of relapse activity:PIRA)、脳MRI、血液検査、安全性などを評価した。再発時には必要に応じて脊髄、視神経・造影MRIを行った。
全MS患者のうち、再発寛解型MS(RRMS)が67.1%、二次性進行型MS(SPMS)が26.6%を占めていた。対象患者の年齢は15~86歳と幅広く、臨床試験で選択基準とされた18~55歳を外れる患者が23.5%含まれていた。オファツムマブ治療期間の中央値は、全例で875日、RRMSで924日、SPMSで714日であった。前治療はナタリズマブが60.4%、シポニモドが15.5%、フマル酸ジメチルが12.0%、フィンゴリモドが7.5%、グラチラマー酢酸塩が0.4%、治験薬(国内未承認)が0.6%と、95.4%が進行性多巣性白質脳症(PML)の発症リスクがある薬剤を投与されており、抗JCV抗体陽性率は92%であった。
実臨床でのオファツムマブの有害事象発現率は2.5%(13/510例)で、全身蕁麻疹4例、倦怠感4例、注射局所発赤・そう痒2例、頭痛2例、違和感1例が認められ、いずれも治療継続に影響を及ぼさなかった。2例(多臓器不全1例、うつ病による自殺1例)が死亡したが、オファツムマブとの関連性はないと判断した。
オファツムマブの妊娠に及ぼす影響
妊娠・出産がMSの進行に影響を及ぼさないことは知られているが1,2)、病勢が適切にコントロールされていない状態で妊娠することがある。
当センターでは、オファツムマブ治療中に妊娠が確定した患者が10例いた。そのうち8例は妊娠確定後に治療を中止し、2例は妊娠20週までに治療を中止した。妊娠8週までに3例が流産したが、7例は正常出産し、正常児で奇形は認められなかった。また、妊娠/授乳中のMS activityは認められず、産後7日目から治療を再開し授乳している。
B型肝炎対策とオファツムマブ
B型肝炎ウイルス(HBV)感染患者において、免疫抑制療法などによりHBVが再活性化して発症した肝炎は重症化しやすく、原疾患の治療も困難にさせるため、発症そのものを阻止することが重要である。「B型肝炎治療ガイドライン(第4版)」において、免疫抑制療法を開始する前に、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体、HBVワクチン歴をスクリーニングし、治療開始後もHBV DNA量を定期的にモニタリングすることが推奨されている3)。
当センターにおいて、HBs抗原が陰性、HBc抗体/HBs抗体が陽性、HBV DNA量が20IU/mL未満であったが、活動性が高い/進行リスクが高いMS患者15例に対して、他剤が使用できないためオファツムマブの治療を開始した。11例は頻回に行うHBV DNA検査が負担/リスク回避のため中止または他剤へ変更したが、4例は他治療への変更が困難なことから治療継続中である。治療継続中の1例にてHBs抗体陽性を1回検出したものの、15例でHBVの再活性化やMS activityはない。
オファツムマブ投与後のCD19陽性B細胞数、IgG、IgMの推移
当センターで他剤からオファツムマブに切り替えたMS患者において、CD19陽性B細胞数、IgG、IgMの推移は図1に示す通りであった。55歳以上、55歳未満でサブグループ解析したところ、IgMについては、図1右に示すような推移がみられた。IgG、IgMは感染症の発現頻度と関連性はみられなかった。

オファツムマブがMS患者の生活に与える影響
現在、当センターを受診するMS患者の半数以上がオファツムマブで治療されている。MS患者の一部からは、「人生が楽になった」との声をいただいており、MS専門医としても、オファツムマブの使用により緊急時の対応が減り、負荷が軽減したと感じている。
進行型MSでは緩徐増悪が継続する例が多いため、RRMSの早期にオファツムマブを開始することが重要と考えている。
1)Confavreux C, et al.: N Engl J Med. 1998; 339(5): 285-291.
2)Houtchens M, et al.: Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2020; 7(6): e890.
3)日本肝臓学会・肝炎診療ガイドライン作成委員会編:B型肝炎治療ガイドライン(第4版), 2022, p.87-88.
1. 警告 1.1 慢性リンパ性白血病の治療のためにオファツムマブを点滴静注したB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの再活性化により肝不全に至り死亡した例が報告されている。[8.1、9.1.1 参照] |
8. 重要な基本的注意(抜粋) 8.1 B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎があらわれるおそれがあるので、本剤投与に先立ってB型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。[1.1、9.1.1 参照] |
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋) 9.1 合併症・既往歴等のある患者 9.1.1 活動性B型肝炎患者、B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性) 活動性B型肝炎患者では、肝炎の治療を優先すること。本剤の治療期間中及び治療終了後は、継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)ではB型肝炎ウイルスの再活性化により肝炎があらわれるおそれがある。[1.1、8.1参照] 9.4 生殖能を有する者 妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び本剤最終投与後6ヵ月間は適切な避妊法を用いるよう指導すること。[9.5.1参照] 9.5 妊婦 9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。サルを用いた胚及び胎児発生・拡充型出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験においてオファツムマブは胎盤を通過することが確認されており、胎児・乳児で末梢血B細胞数の枯渇及び脾臓重量の減少、乳児でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する液性免疫応答の低下が認められている。臨床曝露量の160倍(AUCを指標)で母動物(サル)の乳児において、免疫調節による感染症を起因とした早期死亡が認められている。[9.4、9.5.2参照] 9.6 授乳婦 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤の母乳中への移行は不明であるが、ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている。 |
ご所属、ご講演内容については2024年12月作成時点のものです